【連載ブログ】夫婦のラブ・クリニック~二人のすれ違い、どうしたらいいの?~(9)

カウンセリングで伺うお話の中で、「離婚」「浮気」「セックスレス」「心のすれ違い」など、夫婦問題についてのご相談は、とても多くなっています。

こうした夫婦問題の解決に役立つヒントをお届けする連載、その9回目をお届けします。



今の夫婦問題を解決していく糸口。
そのひとつは

「今、直面している問題は、過去に原因があると気づくこと」

です。

カウンセリングの現場で、ご相談を受ける中で、今の問題の原因は、
最近の二人の状況ではなく、過去に何かしらの出来事があったり、
今までの積み重ねによって、心が離れていくことにある、というケースがとても多いのです。

過去の二人の間に起こった、許せない思い、傷ついた体験、
あるいは、知らず知らずのうちに蓄積された我慢。

そこを整理しないと、今、目の前にある問題だけを見ていても、解決には結びつかないことが
多いのですね。

今の問題だけでなく、元になっている原因がわかれば、それを整理し、癒していくことで、今の二人の関係性を変えていく大きなアプローチになることがあります。

前回の記事では、その原因として「夫婦問題の原因:その1『子育て時代のすれ違い』を書かせていただきました。

今回は、「夫婦問題の原因:その2『新婚時代からのすれ違い』」をお届けします。

◎もし、あなたが「じゃんけん王国」の王子と結婚したら?

あなたが、「じゃんけん王国」の王子とあなたが結婚したとしましょう。

じゃんけん王国では、食事の時に「じゃんけん」に勝たないとご飯を食べる事ができないという風習があります。

王子と結婚したあなたは、毎回の食事の度に、「じゃんけん」をしないといけません。
それは、大切な儀式なので、おごそかに「じゃんけん」が行われます。
また、「じゃんけん」に勝たないとあなたは食事ができません。

そうすると、毎食の度に、いちいち「じゃんけん」をしないといけませんよね。
あなたは、その度に、「こんなはずじゃなかった」と思うでしょうか。

きっと思わないでしょう。
なぜなら、「じゃんけん王国の王子」とわかっていて結婚しているからです。

日本とは風習が大きく違う国だ、と最初から認識しているから、ある時、びっくりするような「風習や文化や考え方の違い」が表れても、「じゃんけん王国では、そうなってるんだ」と思う事ができるはずです。

でも、もし、それが日本人の夫だったらどうなると思いますか?

一緒に暮らしはじめたら、「じゃんけん」をしないと食事ができないという。
我が家はそういう風習なんだ、と夫は主張する。

ロマンスがある間は、それが可愛いとか、面白い、とか思えるかもしれません。

でも、普段は気にならなかったり、我慢できても、自分に余裕がなかったり、夫とケンカした後などに、食事の用意をしている時、「さあじゃんけんをしよう」なんて言われたらどう思うでしょう。

「いいかげんにしてよ!」と怒りたくなると思いませんか?

こんな風習ありえない。
こんな変な人とはつきあっていけない。
そう思うかもしれません。
その時「こんなはずじゃなかった」と思うかもしれません。

それはなぜなんでしょう。
単純な話ではありませんが、ひとつには、
「日本人なんだから、文化・風習・考え方は同じはず」という思い込みがあるから、と言えると思います。

◎結婚とは、同じ国の人同士であっても「国際結婚」のようなもの

私たちは、自分が生まれ育った家庭ごとに、「文化・風習・考え方」が違います。

結婚というのは、お互いの家の「文化・風習・考え方」がぶつかるもの。

ある意味、それは国際結婚と同じなのです。

わかりやすいのは、料理の味付けでしょう。

京都の方のお雑煮が甘い、という話を聞きます。
私の実家は、醤油味なので、私がそうした味付けの方と結婚していたら、お正月にお雑煮を食べる時に、「お雑煮が甘いなんて考えられない!」と思ったかもしれません。

私の友人に、カレーライスは汁物なので、カレーの日は、他におかずが絶対必要、という人がいます。

甘い、辛いなどの味付け。
料理ひとつとっても、それがお互いのストレスになることも、多いようなのです。

こうしたことが、日常のあらゆることに出てきます。

問題は、こうした「違い」にあるのではありません。
だって、国際結婚のようなものなのだから、違って当たり前なのですね。

ところが、この「最初から違うのだ」という認識がなかなかできないので、どうしても「我慢してしまう」ことが起こるのです。

問題は、この「我慢してしまう」ことの積み重ねが、後々、夫婦の問題に発展することがある、ということなのですね。

料理ひとつとっても、「それくらい我慢して当たり前」と思ったり、
時には、「違いは夫に合わせるもの」と思っていたり。

こうしたお互いの家の違いは「大きなストレス」になる可能性があるのに、「ストレスだ」と認識しにくいものなのです。

もし、このような「新婚時代からの我慢が蓄積しているとしたら?」どうでしょう。

今、二人の心がすれ違っている。つながりが感じられない時。
そのルーツが「新婚時代からの我慢やすれ違い」が積み重なってきたものだとしたら。

今、直面している夫婦の問題が、仮に解決したとしても、
その過去の積み重ねを整理して、ときほぐしてあげないと、心が納得してくれません。

今の問題は、その積み重ねが、別の形で吹き出しただけなのかもしれないのです。

◎新婚時代からの思いを振り返ってみましょう。

あなたは、きっと、新婚時代から、ずっと、がんばってこられたのです。

我慢して、弱音を吐けず、一人でがんばらなければならない。

そう思ってこられたのかもしれません。

まずは、結婚とは異文化の二人が暮らすのだから、違って当たり前なんだ、と思ってあげるところから初めてみてください。

この思いをきちんと自分に言ってあげることで、
「自分は悪くなかったんだ。仕方がないこと、どんな夫婦にだって起こることなんだ」と思い、自分を責める気持ちを減らす事ができます。

次に、今まで、どんなことを我慢してきたのかを、思い出してみましょう。
そして、今までよくがんばってきたんだな、と自分をほめて、労ってあげてください。

逆に、相手に強いてきたことはないか、考えてみましょう。
思い当たるところがあれば、相手が合わせてくれたことに感謝しようと思ってみてください。
感謝できなくても、大丈夫です。
ただ、この思いを持つだけで、今は十分です。

そうやって、振り返ってみた時、夫婦で取り組まなければならないことが見えてきます。

一人でやるのが大変な時は、カウンセラ―を頼ってみてください。
誰かに心のうちを話すだけでも、楽になれます。

あなたの心の整理のお手伝いができたら、幸いに思います。

(続く)

☆次回は、「夫婦問題の原因:その3『大きな転機(転職、引っ越し、家の建設など)』をお届けする予定です。

<前回までの記事>
こちらのページをご覧ください。「夫婦のラブ・クリニック<連載目次>」

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