言葉より感情・感性を使うことで素直になれる時がある

パートナーシップにおいて自分の思いを伝えるのが難しい話、よく聞きます。

夫婦や恋人同士でそろってカウンセリングを受けられるようなカップルカウンセリングのケースでは、カウンセラーが私一人の時も、私たちも夫婦（カウンセラー池尾千里と）の時も、ご相談者さんお二人で「目と目でつながりを感じてみる」（！）というやり方をやってもらうことがあります。

「気持ちを言えてない・聞けてない」と思い込みばかりが大きくなる
言葉より感情・感性を使うことで素直になれる時がある

「気持ちを言えてない・聞けてない」と思い込みばかりが大きくなる

パートナーシップって、関係が深くなればなるほど、本当の気持ちが言えなくなることが増えたりします。

今まで一緒に過ごしてきた時間の中には腹が立つことも悲しいこともあったりするので、そうしたことが素直な気持ちを言う邪魔をすることが多いんですね。

折々にコミュニケーションを取れていれば良いのですが、毎日の仕事や家事育児に追われていると、忙しくてお互いの気持ちを確認し合う暇もなく日々が過ぎていくことも多いです。

すると、自分の気持ちを言えてない、相手の気持ちも確かめてない、だから思い込みばかりが大きくなる。

思い込みって言い換えれば「相手の気持ちがわからない」から起こることでもあります。

わからないから疑いばかり強くなるし、ストレスも大きくなるし、それは怒りになります。

そうなると、

「あなたの気持ちが知りたい」

ではなくて

「どうしてわたしの気持ちをわかってくれないのよ！」

という気持ちが全面に出てきてしまうんですね。

わかってほしいはもちろんなんだけど、本当は、あなたの気持ちが知りたい、なんです。

それを解消するには気持ちを確かめ合えばいいのだけど、それができないから、ますます心は主に怒りを使って閉じていきます。

これがパートナーシップの問題の元、だったりします。

しかし、こうした蓄積があると素直に言葉に出して言えなくなってしまうんですよね。

言葉に出すと怒りの形でしか出てこない。

あるいは、怒りが出そうで言葉を控えてしまう。

この怒りは「どうせわかってくれない」「あの時もそうだった」「今更言ったところで」みたいな気持ちなんですが、それが本心ではないんです。

怒りの下には、わかってもらえなかった悲しみとか、何より、ここまでコミュニケーションを取ってこなかった自分への怒りが隠れています。

また、ここで本当の気持ちを言ったら負けた気がする、みたいな競争心も出てくることがあります。

本当は弱音を吐きたいけど、そんな自分が嫌だったり、自分らしくないと感じたり、負けた気がしたりと様々な感情が渦巻いているので、単純に「言いたいことをいいましょう！」というわけにはいかないのです。

言葉より感情・感性を使うことで素直になれる時がある

さて、カップルカウンセリングの話に戻ります。

お二人でカウンセリングに来てくださった方に、こうした心理的な話をお伝えしながら、お互いの気持ちをカウンセラーである私たちが聞いたり、翻訳（この言葉は本当はこういう気持ちで言ってるんですよ、みたいな）させてもらったりして、お互いの思い込みが解けてきた時には、私たちからこんな提案をさせてもらうことがあります。

「いっそ何も言葉に出さずに、相手の目を見て、相手の気持ちや応援する気持ちや愛おしいという気持ちをただ感じてみましょう」

これは、付き合いが長ければ長いほど、めちゃめちゃ恥ずかしいことなんですが、カウンセリングという場があるところでは、意外とお互いの目をきちんと見るということができたりします。

すると、言語化できないけど、なんか温かい気持ちが出てきたり、相手への愛情が感じられたりする場合があるんですね。

この時が、目と目でつながる、という状態になっているんだな、と感じます。

お互いの目を見つめ合うことで、つながりを感じられる。

すると、言葉に出すといろいろな感情が出てきそうで止まっていた気持ちも、お互いなんとなく感じられる。

上手く言えなかっただけで、お互い思い合っていたんだなと感覚的、感情的に分かり合えるなんてこともあるんです。

「頭でわかっていても心が納得いかない」とよく言われますが、目と目でつながりを感じられた時は、「頭ではよくわからないけど心は何か愛情を感じている」みたいになります。

ここから今までのこと、二人の状況などを整理し直すと、頭と心がつながって納得できる、ということになったりするんですね。

そもそも、目と目でつながるやり方にチャレンジするまでの準備が大変ということもありますが、二人でカウンセリングを受けようと思った時点でなんとかしたいという意欲を持てているので、こうしたチャレンジができるとも言えます。

目と目で通じ合うのは恥ずかしいですが、無理なことではありません。

二人の準備ができた時には、うまく使える場合もあるのです。