【連載ブログ】夫婦のラブ・クリニック~二人のすれ違い、どうしたらいいの?~(10)

カウンセリングで伺うお話の中で、「離婚」「浮気」「セックスレス」「心のすれ違い」など、夫婦問題についてのご相談は、とても多くなっています。

こうした夫婦問題の解決に役立つヒントをお届けする連載、その10回目をお届けします。


<前回までの記事>
こちらのページをご覧ください。「夫婦のラブ・クリニック<連載目次>」

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今の夫婦問題を解決していく糸口。
そのひとつは

「今、直面している問題は、過去に原因があると気づくこと」

です。

カウンセリングの現場で、ご相談を受ける中で、今の問題の原因は、
最近の二人の状況ではなく、過去に何かしらの出来事があったり、
今までの積み重ねによって、心が離れていくことにある、というケースがとても多いのです。

過去の二人の間に起こった、許せない思い、傷ついた体験、
あるいは、知らず知らずのうちに蓄積された我慢。

そこを整理しないと、今、目の前にある問題だけを見ていても、解決には結びつかないことが
多いのですね。

今の問題だけでなく、元になっている原因がわかれば、それを整理し、癒していくことで、今の二人の関係性を変えていく大きなアプローチになることがあります。

これまでの記事では、その原因として
「その1『子育て時代のすれ違い』
「その2『新婚時代のすれ違い』
を書かせていただきました。

今回は、「夫婦問題の原因:その3『大きな転機(転職、引っ越し、家の購入など)』」をお届けします。

◎大きな転機(転職、引っ越し、家の購入など)をきっかけに変化する二人

夫婦のコミュニケーションが取れなくなった。
それが二人の間で明確になるきっかけは、浮気やハードワークで家に帰らない、趣味に走るなど、いろんなケースがあります。

夫婦のすれ違いについてのカウンセリングを進めていく中で整理を進めていくと、そうした「すれ違い」のきっかけは、最近に始まったことではなく、「夫婦にとって大きな転機」がきっかけになっている場合が出てきます。

結婚生活で大きな転機をむかえる時というのがあります。

例えば、転職、引っ越し、そして、家の購入。

ここには、「夢の実現」といったワクワクする楽しい気持ちがある場合も多く、それが人生を生きるモチベーションにつながります。
このポジティブな感情は、夫婦の幸せにつながっていくことも多いのですね。

ところが、一方で、新しいストレスやプレッシャーも生まれます。
家を購入した場合は住宅ローン等、転職した場合はそのリスクや新しい環境でのストレス等も起こってきます。
また、新しいスタートに伴い、今までになかった「責任感」や「家族を背負う気持ち」が生まれることも多い。

このポジティブとネガティブな両方の側面が、今までとは違う状況をつくり出し、二人の心がすれ違っていくこともあるのです。

夫は、仕事が忙しくなる。
妻は、新居の暮らしを整えたり、新しい環境になじんだりすることに忙しくなる。
子どもの教育環境が変わって、子どもの心配も出てくることがあります。
共働きの場合は、それらが合算している場合も出てきます。

そうすると、今まではできていたコミュニケーションができなくなり、それが段々と蓄積していって、知らず知らずのうちに「すれ違っていた」ということが起こったりするのですね。

◎「家族のために」働く二人

家の購入や転職などで、新しいスタートを切った場合。

夫は、そこに経済的な責任感を強く感じます。
住宅ローンを返済していく、転職先の仕事が安定していく。
そう感じて、仕事に打ち込むようになるのは、自然なことと言えます。
これが新しいストレスやプレッシャーになって、心に余裕がなくなる場合も多くあります。
でも、それはネガティブなものとは限りません。

仕事をしていく上での、今までにないモチベーションとなり、「ようし、もっとがんばって仕事するぞ!」と意欲的になる場合も多いのですね。

すると、仕事に意欲的な分、帰宅時間が遅くなったり、休日出勤をしたりと、仕事にエネルギーを使っていきます。
休みの日も、普段の疲れが出て、家にいても寝てばかりいたり、家族との時間を億劫がったりする場合もあります。

さて、妻はといえば、新しい生活を整えるのに、とても忙しくなります。
家を購入すると、そこでの生活を円滑にしていくために、様々な気遣いや今まで以上に掃除等のやるべき家事が増えたり。
新しい近所付き合いが始まったり、賃貸から移った場合は、自治体との関わりも大きく変わり、また負担も増える場合もしばしば。
子どもの学校やつき合う学友とその家族との関係性も新しく構築しなければならず、子どもにもストレスがかかったりします。
そのフォロ―に気を使い、忙しくなる。

共働きの場合だと、これがさらに忙しくなり、時間もなくなります。

そうなると、せっかく新しいスタートを切ったのに、夫の、あるいは妻の気持ちが自分から離れたと感じて、とても辛くなったり、寂しくなったりする場合もあるのですね。

夫は、こんなにがんばって働いてきているのに、もっと家では優しくして欲しい、労ってほしいと感じたり。
妻は、日中、こんなに大変なのに、家にいる時には、その思いを聞いて欲しい、もっと家族のことに関心をもってほしいと思ったり。

こうした思いは、その都度、ケンカの形で表面化することもありますが、「我慢して思いを飲み込む」あるいは「そもそも自分の気持ちに気がつかない」場合が多く、それが大きい度合いだけ、蓄積された感情も大きくなります。

ケンカが続く場合も、我慢して言わない場合も、これが長く積み重なってくると、「あきらめ」の気持ちになります。

どうせ言ってもわかってくれない。
時には、そんなことを感じる暇もないほど、余裕がないまま、時が過ぎていくこともあります。

この積み重ねは、どんどん「二人のすれ違い」を大きくし、その隙間に浮気が入り込むことも多いのですね。

経済的な負担や責任感だけが原因ではないのです。
大切なのは、こうした「気持ちのすれ違い」を積み重ねてきたところにあるのですね。

◎大きな決断は「家族の幸せ」のため

もし、こうした過去があるのであれば、「すれ違い」を取り戻すためには、お互いが「家族の幸せ」のために努力してきた結果であることを、感じることが大切になってきます。

つまり、当時からのお互いの気持ち=感じている感情を伝え合うこと。
それによって、相手の知らなかった気持ちを知り、誤解が融けたり、理解が進んだりできるのです。

夫は「家族のために」と思って働いてきました。
ところが、この感覚、男性にとっては「当たり前なので自覚していない」ケースも多いのですね。
自覚していても、こうした感情を口に出さない男性も多いので、表面的にはこうした思いがわかりにくいケースも多々あります。

妻も「家族のために」と思って働いてきました。
でも、仕事が忙しい夫に、その思いを伝える時間がありません。
近所付き合いや子どもの学校の話など、家庭を守る大変さを男性は知らなかったり、理解しにくかったりします。
そのため、なかなか妻の大変さをわかりにくい場合が多々あります。

家族をかえりみない、と思っていたことが、実は、「家族の幸せ」のために努力していたからだとわかった時。

そこではじめて、お互いの気持ちが歩み寄り、「すれ違い」を埋めようとする思いが生まれるのです。

カウンセリングでは、夫婦一緒に受けてくださり、一緒にこうした理解を進めていくケースのほうがまれです。
ほとんどの場合、妻か夫、どちらかの方がカウンセリングを受けられます。

「気づく」のは、どちらか一人でもいいのです。

今の「すれ違い」の元になっている、こうした事実や感情の整理がつくことで、一人が変われば、その変化は、相手に伝わります。
もちろん、すぐには伝わっていかなかったり、変化したりしません。
ある程度の時間はかかるでしょう。

心理学では「気づく」だけで問題は半分解決したようなものだ、と言ったりします。

逆に「気づく」ことができなければ、それをどう変えていくかというアプローチができません。

実は「お互いが家族の幸せのために行動していたこと」に気づくこと。

そのために、男性心理、女性心理を学ぶ、当時の状況を整理しなおす、などの方法が役に立ちます。

夫婦の「すれ違い」は、わかりにくいようでも「愛」ゆえに、起こってしまうことも多いのです。

もし、今、別れを考えたり、あきらめたりしていても、その整理をしないまま、別れたり、止めてしまうのは、心残りだと思いませんか?

あなたの心の整理のお手伝いができたら、幸いに思います。

(続く)

☆次回は、「相手を責める気持ちより、自分を責める気持ちに苦しんでいることを知る」をお届けする予定です。

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