「離婚」についてのご相談を受けた時。カウンセリングではどんなことをお話し、提案させていただくのか。今回は、具体例でお伝えする「カウンセリングの実際」をお届けします。
今回の記事は長文になりますが、あえて一気に掲載させていただきたいと思います。
例えば、こんなケース。
(内容は、池尾が創作したものです)。
* * * * *
35歳女性のご相談
結婚して10年。専業主婦で子どもが一人。
夫は真面目で誠実で優しいタイプ。
何の問題もなく暮らせていると思っていたのに、突然、夫から
「離婚して欲しい」と言われてしまった。
まさに、青天の霹靂、ショックと驚きで、頭が真っ白になってしまった。
離婚の理由を尋ねても、「一緒に結婚生活を続けていける気持ちになれない」の一点張りで、要領を得ない。
泣いたり、怒ったり、謝ったり、そんな気持ちをぶつけたり、優しく声をかけたり、いろんなことをやってみて、夫と話をしようとするけれど、真面目なだけに、一度決めたら頑固に気持ちを変えない人なので、心を開いてくれず、コミュニケーションが取れない。
相談できる友達には話を聴いてもらえるので、とても助かる。
でも、話をした時は楽になれるけど、また、苦しくなる。
友達から「あなたはどうしたいの?」と聞かれる度に、「離婚したくない。一緒にもう一度やっていきたい」と伝え続けてきたけれど、段々、自分の本当の気持ちがわからなくなってきた。
彼は一体何を考えてるのだろう。
そして、わたしはどうしたいのだろう。
別れた方がお互いのためなのかな?
そしたら、子どもはどうなるのだろう。
わたしはどこに住むのだろう。生活はどうなるの?
働く場所を探さなきゃ。
そんなことが、延々と頭を繰り返し巡って、終わりがない。
わたしは、いったい、どうしたらいいの?
* * * * *
以下、実際に面談カウンセリングに来られた時に、どんな風にお話して、何を提案をしていくのかを順を追って書かせていただきます。
こうしたカウンセリングを受けた時に、真っ先にお話するのは
「まず、休みましょう」
というご提案です。
心が一杯一杯になってしまって、眠れなかったり、寝ていても眠りが浅かったり。
24時間、いろんな思いが常に巡っていて、心が休まっていないのですね。
心に余裕がないと
「一日、5分でいいから、何も考えないでぼーっとする時間を作る。」
そう、おすすめしています。
(詳しくは、こちらをお読みください>>>(6)「1日、たった5分でいいから心を休ませる」)
こういう時は、意識しないと休めません。
だから、
「もう、何もがんばらなくてもいいんですよ。
今まで十分、がんばってきたんですから。
でもね、休むことだけは、がんばってみてください。」
そう、お話しています。
さて、次にどうしたらいいかというと
「気づく」
ことをしていきましょうとお話します。
「人が一番苦しいのは、わからないこと」
という言葉があります。
心が一杯一杯になると、何がわからないのかさえ、わからなくなってきます。
その整理をして、
「何がわからなくて、どこまではわかっているのか」
をはっきりさせるだけで、心はとても楽になります。
まず、最も大切なのは、今一番の苦しみが何なのか、に「気づく」こと。
それは、ほとんどの場合
「自己攻撃」
なんですね。
この事例で言えば、「離婚を切り出しておきながら理由を言わないなんて、ひどすぎる!」と夫への怒りが出てきて自然でしょう。
相談している友達に、「いくらなんでも何も言わないのはひどい」、とか、「そんな人、もう別れたら?」と言われたりすることも。
その通りなんですが、どれだけ夫に怒っていたとしても、実は、一番の苦しみは
「自分のせいで夫はこんなことを言い出した」
という自己攻撃であることが多いのです。
ですから、まず、「今、一番の苦しみは自己攻撃である」と気づくこと。
以外とこの気持ちに気づいていなかったり、気づいているつもりでも、自分で思っている以上に大きいことに気づけないでいます。
こうした時は、本当に、信じられないほど、自分を責めています。
それを自覚してください。
まず、自分の心に、自分で言ってあげてください。
「今、自分を責めているのが、一番苦しいんだよね。後悔たくさんしてるんだよね」
みたいに。
その上で、
「でもね、仕方なかったよね。わたしも大変だったもんね」
と自分を労ってあげる。
これがとても大切です。
そもそも、子育てというのは、本当に大変なんです。
また、ずっと夫を支え、家庭を支え続けたのは、あなたなのです。
今は、後悔しない。自分を責めない。落ち着いたら、それは後でやればいいんです。
(詳しくは、こちらをお読みください>>>(8)「夫婦問題の原因:その1『子育て時代のすれ違い』」)
まずは、今までの、最近の自分をほめて、認めて、労ってあげること。
そうお話していきます。
そして、時には、休めないあなたのために、リラックスできる瞑想などのセラピーをすることも。
何せ、24時間体制で考え続けていますので、リラックスできる音楽をかけながら、目を閉じて、温かさを感じてもらうだけで、休めたり、リラックスできたり、時にはそのまま爆睡してしまわれる方もあります。
そうすると、ものすごくスッキリするんですね。
あるいは、近年で一番大変だった時の自分をイメージしてもらい、あの時の自分に労いの言葉をかけてもらう「イメージワーク」などをやってもらうこともあります。
さて、そうは言っても、気になるのは「夫の本当の気持ち」。
次は、夫の心理を理解する、ことをやっていきます。
ここは、男性心理を知る、という知識が役に立ちます。
男性というのは「感情を感じたり、表現することが苦手」と言われます。
わたしにとっては、青天の霹靂であっても、夫は、ずっとずっと我慢したり溜め込んだりしてきていることが多いのですね。
ここまで自分を追い込む前に、話をしてくれたらいいのに、と思われる女性も多いのですが、それができないので、夫は苦しんでいた、ということにもなります。
(詳しくは、こちらをお読みください>>>(12)「男性心理・女性心理を知る(その1))
真面目な男性ほど、この溜め込みが大きく、一度爆発してしまうと、自分でも収拾がつきません。
そうなると、てこでも動かないという頑固さを発揮することも多い。
まずは、自分でもどうしようもないくらい頑になってしまっていることを理解する。
そして、ようするに「すねているんだ」と理解してみてください。
小さい男の子と一緒です。
機嫌を直してもらうには、時間と根気が必要になってくるんですね。
私は、こうした時、童話の「北風と太陽」のお話をさせていただきます。
旅人のマントを脱がせるには、北風がどんなに風を起こしても、頑にマントにしがみつくばかり。
太陽のぽかぽかしたやさしい温かさが、段々と、旅人にマントを脱がせる気持ちにさせます。
厄介なのは、「今、太陽が差し込んでいても、いつ北風が吹くかわからないから、油断しないでおこう」と思っているということ。
だから、本当に根気が必要になってきます。
そう考えていくと、「もう、めんどくさい!なんでわたしばっかり、こんなことし続けないといけないの!」という気持ちも出てきます。
そのために、まずは、自分のケアをしてあげること。
自分のサポートをしてくれる誰かを頼りにして、そこで自分の気持ちを受け止めてもらい、夫には優しくし続けること。
一時的に、夫以外の場所でサポートしてもらいながらでないと、夫に微笑み続けることは難しいんですね。
そして、夫がようやくマントを脱ぎ始めたら、お互いに支え合う関係を初めていけることになります。
こうした時は、一時的な休憩場所や、一緒に歩いてくれる存在が、とても心強いんですね。
夫には、何か特別なことをしなくてもいいんです。
ただ、「北風と太陽」の話をいつも思い出して、温かい気持ちで見守り続ける。
「おはよう」「おかえり」「ありがとう」という言葉をかける。
それを自分のケアをしながら、続けていくことで、夫の頑な態度が変わってくることもあります。
あるいは、その歩みの中で、本当に二人が別れたほうが幸せなんだ、と気づいて、別れを決意される方もみえます。
いずれにせよ、大切なのは、「自分が幸せである」という選択なんですね。
私は、カウンセラーは、こうした時、クライアントさんと二人三脚で、幸せを目指して歩いていく存在と思っています。
もう、ここまで十分一人でがんばってきたんです。
これからは、一人でやらなくていいんです。
誰かを頼って、助けをかりながら、進んでいきましょう。
そして、夫婦で一緒に進んでいけることになれば、そのゴールは、夫婦で二人三脚で人生を歩むことです。
あなたの幸せのお手伝いをさせていただけたら幸いです。
(次回に続く)
<今までの連載記事をご覧ください>
今回の記事について、詳しくは、こちらのページをご覧ください。「夫婦のラブ・クリニック<連載目次>」